感染症予防Infection
感染症を正しく恐れよう
正しく知って正しく予防する
1.感染症とは
感染とは、ウイルスや細菌などの病原体がなんらかの形で体内に入り込み、体内で増え始めた状態を指します。症状がでなくても、感染していることがあります。 感染が起きるには、「病原体」「感染経路(どうやって体内に入るか)」「感染する相手(宿主)」の3つの要素が必要です。このうち病原体(感染源とも言います)には、細菌やウイルスのほか、寄生虫や真菌(カビ)などさまざまな種類があります。感染する相手は、人のほかに動物も含まれます。
感染症は、重症化し命を脅かしたり、他人に感染させる場合があるため、日頃から予防を心がけましょう。予防するためには①病原体の排除②病原体がはいってくる感染経路の遮断③抵抗力の向上が重要となります。
2.感染症の分類 日本の法律では、症状の重さと感染しやすさなどから感染症をいくつかに分類しています。エボラは一類、はしかや水ぼうそうは五類となっています。一類がもっとも危険度が高く、感染が確認されると入院隔離となります。
3.感染症の主な感染経路
①空気感染特徴:空気中を漂う微細な粒子(飛沫核)を吸い込むことにより感染する
例:結核、麻疹(はしか)、水痘(みずぼうそう)など
②飛沫感染
特徴:咳やくしゃみで飛び散った飛沫を吸い込むことにより感染する
例:新型コロナウイルス、インフルエンザ、かぜ、百日咳、マイコプラズマなど
③接触感染
特徴:感染者(源)に直接接触して感染する
例:伝染性膿痂疹、梅毒、淋病、破傷風など
④媒介物感染
特徴:汚染された水、食品、血液、昆虫などを介して感染する
例:コレラ( 水 )、食中毒(食品)、ウイルス性肝炎(血液)、マラリア(蚊)など
先述の通り、感染症を予防するためには①病原体の排除②病原体がはいってくる感染経路の遮断③抵抗力の向上が重要となります。
1.病原体の排除
①手洗い
病原体の排除には、基本の予防である手洗いを徹底し、身の回りの掃除をして、清潔を保つことが大事です。
手洗いの効果は下図の通り。手洗いなしの状態と比べると、石鹸を使って10秒もみ洗い後、流水で15秒すすぐことでウイルスを1万分の1に、これを2回繰り返し洗うことで100万分の1に減らすことができます。
厚生労働省が公開している「正しい手洗いの方法」では、下記のポイントが挙げられています。
- 石鹸を使う
- 1回15秒を2セット、30秒掛けて洗う
- 指先や爪の間まで念入りにこする
- 洗い残しが特に多い、指の間や付根まで良く洗う
- 手首を洗うのも忘れずに
- 洗った後は清潔なタオルで良く水分を拭き取って乾かす
手洗いのタイミングも重要です。外出先から帰ってきたときや食事の前など、以下の5つのタイミングを参考にこまめな手洗いを習慣にしましょう。
- 公共の場所から帰ったとき
- 咳やくしゃみ、鼻をかんだとき
- ご飯を食べる前と後
- 病気の人のケアをしたとき
- 外にあるものを触ったとき
②消毒
・手指のウイルス対策
基本的には、こまめな手洗いを心がけ、石鹸やハンドソープを使った丁寧な手洗いを行うことで、十分にウイルスを除去できます。ただし、手洗いがすぐできない場合にはアルコール消毒が有効です。
・身の回りのもののウイルス対策
テーブル、ドアノブなどの身近なものの消毒には塩素系漂白剤や、一部の家庭用洗剤が有効です。
・空間のウイルス対策
定期的に換気を行いましょう。
・「次亜塩素酸XX」は人にはダメ!身の回りのものの消毒に利用する
テーブル、ドアノブなどには、アルコールよりも熱水や塩素系漂白剤、一部の洗剤が有効とされています。
市販の塩素系漂白剤では、その主成分である「次亜塩素酸ナトリウム」が有効です。次亜塩素酸ナトリウムは市販の家庭用漂白剤などに含まれています。濃度が0.05%になるように薄めて拭き、その後、水拭きしましょう。間違っても、空間への噴霧はしないでください。次亜塩素酸ナトリウムは物品の消毒用です。
その他、身の回りのものの消毒には市販の家庭用洗剤の主成分である「界面活性剤」も一部有効です。有効な界面活性剤が含まれている製品のリストが、独立行政法人 製品評価技術基盤機構のWebサイトで紹介されています。
※次亜塩素酸ナトリウム液の作り方
厚生労働省のWebサイトでは、身近に手に入る商品を使って、身近なものの消毒に有効な次亜塩素酸ナトリウム液の作り方が紹介されています。使用時には、換気や家事用の手袋を付けるなど、商品パッケージや各メーカーのWebサイトの説明を参考にしましょう。
2.感染経路の遮断 ①マスクの正しい付け方・選び方 マスクには、上下と裏表があります。買った際に必ず確認しましょう。厚生労働省が公開している「正しいマスクの付け方」では、以下のポイントが挙げられています。
- マスクを付ける前にしっかり手洗いをする
- マスクを鼻の形に合わせ、すき間を防ぐ
- マスクを下まで伸ばし、顔にフィットさせる
市販のマスクとして手に入りやすい不織布マスクは使い捨てにし、使い終わったマスクはビニール袋に入れて捨てるようにしましょう。 マスクには不織布マスクや布マスク、フェイスシールドなど、さまざまな種類があります。マスクの種類によって、飛沫やエアロゾル(空気中にただよう微粒子)を防ぐ力が違います。また、不織布マスクを選ぶ場合、BFE PFE の記載を確認しましょう。数値が高いほど、性能がよいことを示しています。
※理化学研究所・神戸大学・豊橋技術科学大学研究チーム 「豊橋技術科学大学プレスリリース」を元に作成
②換気をおこなう
換気の不十分な空間では、空気中のウイルス濃度が高くなることがあり感染のリスクが指摘されています。こまめに換気を行い、部屋の空気を入れ換えることが必要です。
厚生労働省のWebサイトでは、換気時のポイントとして以下が挙げられています。
- 室内温度が大きく上がらない、または下がらないよう注意する
- 定期的な換気を行う:1時間に2回
- 窓を使った換気を行う場合、風の流れができるよう、2方向の窓を、1時間に2回以上、数分間程度全開にする
冬場の換気については18℃を目安に、室温が下がらないように行いましょう。また、適度な加湿(湿度40%以上が目安)も大切です。
一般家庭でもできる冬場の換気の工夫として、以下があります。
- 常時換気設備(24時間換気システム)を使用する
- 常時換気設備がない場合、台所や洗面所などの換気扇を常時運転して最小限の換気量を確保する
- 室温が下がりすぎないよう暖房器具を使用し、窓を少しだけ開けて換気する
- 人がいない部屋から先に換気して室温をなるべく保つ「二段階換気」(図参照)も活用する
基本の換気方法では、短時間で窓を全開にする方法を紹介しましたが、この方法の場合一気に室温が下がってしまいます。そのため、冬場は一方向の窓を少しだけ開けて常時換気を確保する方が、室温変化を抑えることができます。この場合でも、暖房によって室内・室外の温度差が維持できれば、十分な換気量を得られます。
※厚生労働省 「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」を元にHealth Amulet編集部作成
3.抵抗力の向上
①抵抗力を強くする生活習慣
抵抗力を高めるだろうと考えられている生活習慣を、ハーバード大学医学部が発表しています。そこでお勧めされているのは以下のような生活です。
・喫煙しない
・果物や野菜を多くとる(よほど偏食でない限り、サプリなどが免疫力を高める証拠はありません)
・定期的な運動
・適正な体重の維持
・飲酒は適度に
・十分な睡眠
・まめに手を洗うなど、感染を防ぐための取り組み
・ストレスを最小限に抑える
一方で、抵抗力を下げる原因としてわかっているのは、一部の病気や薬の副作用のほか、誰もが避けがたい加齢です。若い人と比べて、高齢者は感染症にかかる可能性も、それが重症化して亡くなる可能性も高いのです。また、インフルエンザワクチンの研究ではワクチンの効き目は子供に比べて高齢者で低いことが示されています。ただし、加齢がどのように抵抗力を下げるのかはまだはっきりしていません。
②ワクチン接種で抵抗力を向上させる
ワクチンは、体の抵抗力である免疫を強めて感染症から体を守ります。免疫には記憶力があって一度闘った相手のことを覚えてくれます。このおかげで、私たちの体は一度かかった感染症にはその後かかりにくくなります。ワクチンは、感染症になる前に免疫に「練習」をさせて相手のことを覚えさせ、抵抗力を鍛える道具です。上手に使うようにしましょう。