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歯の健康Oral Health

歯の健康

口と歯の健康が全身の健康へ

歯や口の問題

1.むし歯 むし歯は、細菌が糖質をもとに作り出す酸が歯を溶かすことで生じます。フッ化物配合の歯磨き剤の利用や、シーラント、歯みがきの励行、糖分を含む食品の摂取頻度の制限などで予防できるといわれています。
むし歯は極めて罹患率が高く、多くの人が生涯のうちに一度はかかる疾患です。痛みを伴い、自然治癒をしないため治療が必要になります。ゆっくりと進行し、小児に多発しますが、大人でもよく発症します。
むし歯の治療は、崩壊した歯質を歯科材料で置き換えるのが主な方法であり、元の健全な歯に回復するわけではありません
むし歯が発生しやすい歯の部分は、プラークを除去することが難しい部分です。具体的には、臼歯の溝や前歯の裏側のくぼみの部分・歯と歯の間・歯ぐきに近い部分などです。特に臼歯の溝は、歯ブラシの毛先が届かず、子供に発生するむし歯の8割以上がこの部位から発生しているという報告もあります。

2.歯周病 歯周病は、歯と歯ぐきのすきま(歯周ポケット)から侵入した細菌が、炎症を引き起こし、歯を支える骨を溶かしてしまう病気です。毎日の歯みがきやデンタルフロスの使用、定期的な歯石除去が有効とされています。
むし歯と異なり痛みが出ないことの方が多く、気づかないうちに進行し歯肉からの出血などが起こった後、歯が自然に抜け落ちるほど重症になることがあります。歯を失う80%以上の原因は歯周病もしくはむし歯によるものです。
歯周病初期の段階ではなかなか自分自身で気がつくような症状は出てきませんが、次のような症状があったら、歯周病の可能性があります。歯科医療機関で検査を受けてみる必要があります。

朝起きたときに、口の中がネバネバする。 歯みがきのときに出血する。 硬いものが噛みにくい。 口臭が気になる。 歯肉がときどき腫れる。 歯肉が下がって、歯と歯の間にすきまができてきた。 歯がグラグラする。
また次のような方には、歯周病が起こりやすいことが知られています。

45歳以上の方 喫煙者 妊娠中 糖尿病にかかっている方 歯みがきの悪い方
これらにあてはまる方は、歯周病のリスクが高いといわれていますので、いちど歯科医療機関で検査を受けることをお勧めします。

3.口臭 口臭には生理的口臭と病的口臭がありますが、その原因はほとんどが舌苔(ぜったい:舌の表面につく白い苔状のもの)です。したがって舌の清掃による舌苔の除去が最も有効な予防法です。
また、何の自覚もないのに家族から口臭を指摘されるようになったら、歯周病が原因の可能性がありますので歯科医院での専門的な検査・治療が必要です。

生理的口臭の予防 生理的口臭の予防のためには歯磨きに加えて舌清掃を行って舌苔を除去し、舌を清潔に保つことが最も効果的です。
舌苔のつき方には個人差があり、さらに同じ人でも時間帯や体調によってつき方が異なりますが、このような差がなぜ起こるのかはよくわかっていません。しかし、起床時や絶食時などにその量が多くなる傾向があるようですから、咀嚼・嚥下活動やそれに伴う舌の運動や唾液の分泌量と大きく関係していると考えられます。
さらに口臭の一日の変動リズムも食事のリズムとよく対応しています。したがって舌清掃は朝起きてすぐに行い、食事は毎日規則正しくとり、よくかんで食べるようにしましょう。

・舌清掃の方法
舌清掃は、毛先の柔らかい小児用の歯ブラシや目の粗いタオルなどを使ってもかまいませんが、専用の舌ブラシを使うとより効果的です。
Ⅰ.鏡を見ながら舌を思いきり前に突き出して、舌の後方に舌苔がついていないか確認してください。
Ⅱ.舌ブラシを鏡で見える最も奥に軽くあて、手前に引いてください。決して力を入れ過ぎないようにしてください。またこの時に息を数秒間止めながら行うと、嘔吐反射が出にくくなります。
Ⅲ.舌ブラシの先を水道の水でよく洗い、舌ブラシの先に汚れ(舌苔)がついてこなくなるまで、Ⅰ.~Ⅱ.を繰り返してください。
一日の舌清掃の回数は、起床時の一回で結構です。それ以上行うと舌の粘膜を傷つけるおそれがあります。また舌に傷や潰瘍があるときは、舌清掃を中止してください。

病的口臭の治療 口臭は健康な人でも強くなることがありますが、何らかの病的な原因があって口臭が強くなることがあります。これを病的口臭といいます。その代表的なものが歯周病です。歯周病の他には、大きなむし歯や粘膜の潰瘍などが原因となることがありますが、これらの病気と異なり、歯周病はほとんど痛みもなく進行していきます。したがって何の自覚もないのに家族から口臭を指摘されるようになったら、一度歯科医院を受診して歯周病の検査を受け、専門的な治療を受けることで改善します。

一方口の中以外では、副鼻腔炎(いわゆる蓄膿症)や、ごくまれに肝臓病や腎臓病などの全身疾患が原因となって口臭が強くなることがありますが、これらは口臭以外にも何らかの自覚症状をともないます。

実は全身の疾患と関連のある歯の健康

1.心疾患や慢性腎臓病、呼吸器疾患、骨粗鬆症、関節リウマチ、がん、早産・低体重児出産など、さまざまな全身疾患と関連 なかにはエビデンスが十分ではないものもありますが、いずれにしても、歯周病を治療することにより口腔の健康を維持することは、全身の健康維持にとっても重要であるといえます。

口腔と全身の健康状態に関連するコモンリスクファクター

全身の健康状態に関連する生活習慣病は、その名の通り、食生活、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの日ごろの生活習慣が原因となって起こるさまざまな病気のことをいい、生活習慣病の発病や悪化に関係する好ましくない習慣は、生活習慣病のリスクファクター(危険因子)と呼ばれています。
むし歯や歯周病などの口腔疾患は歯磨きなど口腔清掃習慣の影響を強く受けますが、食生活や喫煙など全身の生活習慣病と関連の深い生活習慣の影響も受けており、生活習慣病と多くのリスクファクターを共有しています(コモンリスクファクターの概念)。むし歯や歯周病を予防し健康な口腔状態を保つためには、口腔を清潔に保つだけではなく、食生活の改善や禁煙なども重要な要素であり、そのことは全身の健康維持にも繋がります。

出典: 厚生労働省「e-ヘルスネット 口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連」

2.歯周病は糖尿病の合併症とされている 歯周病はさまざまな全身疾患と関連していることが報告されています。なかでも歯周病と糖尿病との関連はエビデンスが高いものとして知られています。
糖尿病は糖代謝異常により高血糖状態となる代謝疾患であり、国内の患者数が多い疾患の一つです糖尿病による免疫機能の低下から感染しやすい状態となることで、歯周組織の炎症が進み歯周病が悪化することから、歯周病は糖尿病の合併症としても認識されています。多くの疫学調査は、糖尿病患者の歯周病が進行していることを示しており、また歯周病のある糖尿病患者に歯周治療を行うことで、血糖コントロールの指標となるHbA1cに改善が見られることから、歯周病と糖尿病との間には双方向的な関連があるといわれています。

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